細菌の薬剤排出ポンプにおける阻害剤結合部位の特性を解明

大阪大学 高等共創研究院の山崎聖司 准教授(産業科学研究所・薬学研究科 兼任)、産業科学研究所の西野邦彦教授(薬学研究科・感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループは、細菌の薬剤排出ポンプにおける、阻害剤結合部位の空間的な特性を明らかにしました。大規模な薬剤耐性菌パンデミックの回避に向けた新薬の開発に、明確な道筋が示されました。
これまでに当研究グループは、細菌に存在する薬剤排出ポンプが、細菌の薬剤耐性化に大きく寄与していることを解明してきましたが(Nature 480:565-9, 2011、Nature 500:102-6, 2013等)、薬剤排出ポンプ阻害剤は未だ実用化されておらず、阻害剤結合部位の特性も不明でした。
今回、当研究グループは、人工的にアミノ酸を変異させた多数の変異型ポンプの解析により、阻害剤が結合するためには、阻害剤結合部位の上部・中部・下部それぞれの空間的スペースが重要であることを明らかにしました。実際に当研究グループは、本研究成果をもとに新規阻害剤の開発を進めており、早期実用化が期待されます。

詳細はこちら(https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/hot_topics/topics_20221028/)

本研究成果は、2022年10月27日(木)に米国科学誌「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:”Spatial Characteristics of the Efflux Pump MexB Determine Inhibitor Binding”
著者名:Seiji Yamasaki, Naoki Koga, Martijn Zwama, Keisuke Sakurai, Ryosuke Nakashima, Akihito Yamaguchi, Kunihiko Nishino
DOI:https://doi.org/10.1128/aac.00672-22

なお、本研究は、文部科学省「物質・デバイス領域共同研究拠点 COREラボ」「人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンスCORE²-Aラボ」、JST「センター・オブ・イノベーション(COI)」「戦略的創造研究推進事業チーム型研(CREST)」、JSPS「科研費基盤(B)・挑戦的研究(萌芽)・若手研究」、日本財団・大阪大学「感染症対策プロジェクト」、AMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の助成を受けたものです。