人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンス キックオフシンポジウム・CORE2協働センター発足式が開催されました

 2022年4月、5大学5研究所アライアンス(北大電子研・東北大多元研・東工大研究院化生研・阪大産研・九大先導研)は、‟クロスオーバーアライアンス“として新しく生まれかわり、中核機関となる東北大多元研にCORE2協働センターを設立いたしました。
 これを記念し、去る5月16日(月曜日)に、キックオフシンポジウムとCORE2協働センター発足式をオンラインで盛大に開催いたしました。
 東北大多元研の寺内正己所長(アライアンス本部長)のご挨拶と事業説明に続き、文部科学省研究振興局大学研究基盤整備課長の黒沼一郎様と、東北大研究担当理事の小谷元子様から温かい祝辞を頂戴いたしました。

 講演の部では、まず初めに、東北大多元研(AIMR兼任)ディスティングイッシュトプロフェッサーの阿尻雅文教授に「超臨界水中での反応・モノづくり -Mixing Unmixable-」と題して特別講演を行って頂きました。超臨界状態という特殊な環境で作製できるナノマテリアルについての内容であり、未来社会への期待が大きく膨らむ大変貴重な講演でした。
 招待講演1は、北大電子研の長山雅晴教授の「非線形現象に対する数理モデリングとその応用」でした。自己駆動体運動の数理モデルの研究を、シミュレーション映像と合わせて説明していただき、数理の持つ無限の可能性と応用性を示していただきました。
 招待講演2は、阪大産研の櫻井保志教授による「ビッグデータのためのリアルタイムAI技術」でした。まさに今、安心安全な社会の構築のために大きな脚光を浴びているAI技術を、分かりやすい言葉でお話しいただきました。様々な危険予測等が技術的に可能になる時代の到来が近づいていると感じさせる有意義な講演でした。

 その後、今年度からスタートした画期的なプログラム(CORE2-Aラボ、若手フィージビリティスタディプログラム)の研究代表者による講演発表が行われました。

 まず、CORE2-Aラボ講演1として、産研の永井健治教授による「トランススケールスコープAMATERASを利用したマルチネットワーク型全細胞解析研究」の講演が行われました。生命・バイオ分野という奥深い領域において、検討から自作機器製造に至るまで包括的に研究を行っておられ、全細胞解析生物学とデータ駆動科学のクロスオーバーによって人類に貢献する革新的イノベーションを詳しく解説していただきました。

 続いて、CORE2-Aラボ講演2として、産研の山崎聖司准教授の「パンデミック回避に向けた薬剤耐性菌性状解析ナノデバイスの開発」の講演発表が行われました。山崎聖司准教授は、西野邦彦教授や櫻井保志教授、九大先導研の柳田剛教授らと共同研究チームを組み、ナノ材料科学と最近遺伝子工学との連携により、即日で薬剤耐性菌検出を可能とする検査デバイスの開発を目指します。いかなる性質の細菌でも共生共存できるような新しい学問領域を提唱され、これからの研究の進展が期待されます。

 CORE2-Aラボ講演3は、東北大多元研の笠井均教授により「Nano プロドラッグ細胞内代謝ダイナミクス解明と新規DDS開発」をご発表頂きました。これまで計測困難であったナノ薬剤の代謝過程の観測を実現することにより、次世代の抗がん剤開発につなげる取り組みを詳細にご説明頂きました。優秀な拠点利用者を巻き込んで行われている注目の共同研究として、素晴らしい成果が待たれています。

 次に、若手フィージビリティスタディプログラムの研究代表者からの発表を行いました。

 まず初めに、東北大多元研の小林弘明講師が「系統的な実験データに裏付けされた高活性電極材料創出およびフロンティア触媒材料の低コストデータ駆動型評価システム探索」を講演されました。小林講師による新規ナノ材料合成技術・岩瀬助教による第一原理を用いた計算科学・東工大化生研の菅原助教のデータ科学を融合させ、新たな材料開発の方向性を示して頂きました。

 2番目の講演は、東工大研究院化生研の澤田知久准教授による「超分子カプセルツールを利用した光機能性分子の創製」でした。光学特性をもつ機能性有機分子と、可溶化・閉じ込め効果を発揮する超分子カプセルツールの融合によって、新たな機能性材料の発掘を目指していくという独創性にあふれた研究を発表して下さいました。

 講演の最後をしめくくったのは、産研のLi Haobo助教の「水素化酸化物を用いた高効率熱管理デバイスおよび関連熱電材料の設計」でした。産研の材料創成技術と、電子研の材料評価技術の密接な連携により、水素化ニッケル酸化物の熱電材料としての可能性を探索することについて、有意義な発表を行って頂きました。

 関野徹所長(アライアンス副本部長)の閉会のご挨拶を頂き、アライアンスを支える全ての皆様への感謝と、全体総括、今後の展望をお話しいただきました。

 本会は、オンライン開催で143名の参加があり、社会課題解決を志向する異分野融合や新分野創生の研究への高い関心がうかがわれました。
 人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンスは、2022年度~2027年度の6年間、社会課題解決や若手人材育成、国際/産学連携、技術支援プログラムなどの推進により、「人」が生きる社会を豊かに発展させ、ともに「知」を高め合う活動を展開していきます。皆様のご参画を心よりお待ちしております。

   (監修)東北大多元研 高島正特任教授【アライアンスキャピタル部門長】
(統括)東北大多元研 芥川智行教授
(司会)東北大多元研 火原彰秀教授